現在、転職市場においては、採用ニーズに対して人材が足りない「売り手市場」が続いているが、中でも深刻な人手不足に悩まされているのが自動車業界。
特にメカニック職種については深刻な状況にある
この問題に対応すべくいち早く組織改革を進め、人材の定着に成功している事業者がある。今回は、2つの事業者の人材不足解消に力を注ぐ取り組み内容を、具体的にご紹介したい。
中高年への手厚い制度で人材定着
兵庫県西宮市に本社を構える
1970年に開設されたメカニックセンターでは、業界に先駆け、30年も前から女性が働きやすい環境整備に力を入れている。産前産後休暇は8週間、つわり休暇、生理休暇、子どもが病気になった時に休める制度などを以前から取り入れているほか、男性の育児休暇取得も推奨している。制度の充実を受け、長い人では30年以上も働いているという。
子育てをしながら働く行 早苗さんは、約12年勤務するメカニック受付エキスパート。出産時のことを振り返り、次のように話してくれた。
「昔から産休・育休はしっかり取れるので、子どもができたからと言って辞める人は少ないですね。ロールモデルになる女性の先輩がたくさんいたので、私自身、子どもができた時も辞めようとは思いませんでした。つわりで辛かった時、つわり休暇の制度があるのはとても心強かったですね。そして何より、『休んでいいよ』と周りが言ってくれる雰囲気に支えられ、励まされました。そして産休・育休はそれぞれ8週間ずつしっかり取得。職場復帰後はしばらく夜勤なしにしていただきましたし、日勤も1時間の時短勤務ができました」
また、同社では7年ほど前から研修の強化にも力を入れている。重視しているのは、新人社員のフォローアップ研修。事前に仕事や職場環境に関するアンケートを実施し、その内容をもとに意見交換を行うという研修を、3カ月目、6カ月目に行っている。
「離職傾向者の潜在的心理状態」の調査によると、入社後3カ月に差し掛かるころから、仕事に対するモチベーションがガクンとダウンするという。入社直後は、「早く仕事を覚えて一人前になりたい」「お客様の方々との会話が楽しい」など、モチベーション高く過ごせるものの、3カ月後ぐらいから、仕事についていけないと気持ちが大きく沈んでしまう。多くの会社では、6カ月目以降にメカとして独り立ちするが、その時点でもモチベーションが戻らず、そのまま離職を選んでしまうケースが多いのだという。
同社では、この「3カ月目・6カ月目危機」を無くすべく、フォローアップ研修で思いのたけを自由に語ってもらったうえで、適切で親身なアドバイスを行い、社員同士の絆をも深めている。
また、新人には教育担当の社員が付き、仕事の不安や悩みにも対応。入社1年目の西海 優佳さんは、新人時代を振り返り「初めは戸惑うことも多かったけれど、1つ上の先輩に何でも相談できたので、不安が軽減しました」と話してくれた。
そのほか、技術研修、分野別研修、他施設との合同実践研修、新任役職者研修、役職者研修など、年間を通して各階層向けにさまざまな研修を実施。どの研修も少人数で行い、感想をみんなの前で共有し合うのが特徴だ。「周りも同じように悩んでいる。自分一人が辛いわけじゃない」と励まされたり、「みんな前向きに頑張っている」と刺激を得られたりする効果も大きいという。